《墓守ストルミスカ》と呼ばれる一族がいた。
還るべき墓を持たない寄る辺なき者を看取り、
概念としての墓所で在り続ける一族。



いつか本当に還るべき場所に戻るまで、
ストルミスカは死者の魂の揺り籠となる。

――はず、だった。



これは、そんな一族の末裔であるひとりの娘の物語。
 

 


 






墓守ストルミスカの最後の末裔。
幼少期に親と死に別れ、27の今までひとり世界を流離ってきた。

旅の中、看取った相手から遺された一冊の本。
それが、彼女を《戯書》の世界へ導くものとなる。



  アレンカ=ストルミスカ

age * 27
height * 174cm
hair * 砂色
eyes * 深緑

E:形見の剣
E:守護石の耳飾り
 
お茶が趣味
戯書世界の魔物、オニビを飼っている

  アレンカと戯書

 アレンカ=ストルミスカという娘
  
 27歳。褐色の肌と砂色の髪、深緑の瞳。174pのすらりとした長身の、美しい娘。
 先祖の代より、《ストルミスカ》が看取り続けた魂を自身に宿す。墓守の一族最後の末裔。
 幼少期に父と死に別れてよりの19年、たった独りで放浪を続けていた。
 鮮やかな身のこなしを得手とする、流麗な剣の使い手。

 他人と深く関わる事の無かった生い立ちの為か、一般常識に乏しい。識字能力は殆ど無い。
 時折他人の依頼を受けて護衛をしたりする事もあったが、人里に寄る事は少なかった。
 言葉遣いはひどく堅く、おおよそ女性らしくない。
 寡黙で表情も乏しく、その整った容貌と鋭い眼差しとも相俟って、どこか冷たい印象の娘だった。

 孤独にのまれぬ為か、心をとざして日々をただ生き延びる事だけに費やしていた。
 その為、人間味に欠ける。己の宿命に逆らう事も出来ず、諦めて受容している。
 己を殺し、ストルミスカの宿命そのものとして獣のような半生を送っていたが、
 茶を飲むことが、アレンカ個人の唯一の趣味であった。


 《墓守ストルミスカ》
 
 彼女の一族《墓守ストルミスカ》は、
 帰るべき故郷を離れたまま命を落とす者達を看取る民である。
 彼等の先祖も異教の徒に故郷を奪われ、帰還を果たす事無く命を落としていった。
 巫師ストルミスカは彼等の魂を身に引き受け、いつか故郷に彼等を還すと約束する。
 その約束が、今日までの墓守の一族の在り方を決定づけていた。

 しかし、その約束は果たされる事無く今日まで続いた。
 ストルミスカの魂そのものに宿した無数の魂たちは、次第に一族を侵蝕し、
 またある時は周囲にまで影響を及ぼしたという。

 ――それを父から聞かされていたアレンカは、
 このまま独り消えてゆくのが最後のストルミスカに相応しいと考えるようになっていた。

 
  戯書 =タワムレガキ=
 
 旅の最中。ある時、彼女は瀕死の重傷を負った男と出会う。
 自分はどうするべきかを問うアレンカに、男はただ、一冊の本を差し出した。

「大事なものなのか」
 訊ねる彼女に、男は頭を振る。わからない、と。
 眉根を寄せるアレンカに、男はぽつり、ぽつりと語る。

 "今は開いても何も起きはしないが、時が来れば不可思議な世界に導く扉となるだろう"
 そう言って、父から譲り受けた本だったと。
 父が語る”不可思議な世界”の話に、ずっと憧れていた。本を開くのが、夢だった。
 しかし、自分の生きている間に、その時は訪れなかった。
 そうしている間に、故郷は紛争で失われ、本の世界を旅したと語る父も命を落とした。
 敵の手を逃れのがれて流れる中で、自身の命の灯火もまた尽きようとしている。
 人里離れた辺境で、自分と共にこの"世界"が朽ち果てていくのは忍びない。

 そう、微かに笑って。

「……あなたと出会えたのは幸いだった。これは、宝で……、ぼくの、夢だ」

 男は、そう言って目を伏せる。

「持っているだけでもいい。せめて、人里に返してくださるだけでも。
 ……ぼくの夢を、父の過ごした日々を。途絶え、させないで。誰かに、繋いで……」

 それきり途絶えた言葉。落ちる手。

 アレンカは男が遺した本を手に取った。
 死にゆくものに託されたもの。本の世界。ほんとうにあるのか、そんなものが?

 
 ある夜。露営の火の傍、ふと開いた本。
 ――ふと気付いた時には。彼女は、見知らぬ世界に降り立っていた。
 『戯書』――と呼ばれる、その世界に。

 
  戯書の世界
 
 戯書の世界に落ちた彼女は、しかし目の前の出来事をただ受容し続けた。
 この世界にはこのように不思議な事もあるのだろうと。

 戻り方も分からぬままその世界で戯れに日々を過ごす。
 戯書で出会った友人から譲り受けたオニビと共に農園で暮らし、
 そこで茶や農作物を栽培する傍ら、趣味である茶を共にする仲間も出来て。 

 外敵に怯える事も、食べ物に困る事もなく、やさしい者達と共に過ごすあたたかな日々。
 変わらない日々、変わらない顔触れ、変わることのないこの場所で、日々うつろいゆくもの。

 種が芽吹いて葉を伸ばし、蕾が花になることも。
 雲が流れて陽が翳り、時には雪の降ることも。

 初めてだった。そうして、眺め続ける事は。
 穏やかに移ろう日々の営みが、アレンカにとっては得難い宝物のように尊いものだった。

 そうして生きる中で、いつしか元の世界に戻る事を厭うようになるアレンカ。
 このままではいけない、優しい日々に浸るだけでは。
 いつか、自分は元の世界に戻らねばならぬというのに。

 流れるままに生きて、朽ちてゆく。ただそれだけだと諦めていた。
 いつしか芽生え始めた本心からも、目を背けた。
 叶えられることのないものだからと。

 ストルミスカではなく『アレンカ』として生きたい。
 戯書の世界で彼女の中に芽生えたその想い。

 その本心をすくい上げたのは、戯書で出会った友人だった。
 
 宿命。己の在り方、為すべきこと。そして、彼女自身が望むもの。
 受容と諦観に生きた彼女は、
 初めて自分の道を選び取る為に生きるようになる。
 


 

  生い立ち
 アレンカ本人が己の生涯において覚えていることは少ない。
 物心ついた幼少期の頃、既に父と共に流浪の旅路についていたこと。
 生きる術や、生まれ持った言語とは違うことばを教え込まれたこと。
 十になるやならずの頃に、父と死に別れたこと。
 それから、独りぼっちだったこと。

 ストルミスカであるという事を知られ、死神と呼ばれる日もあったこと。
 護衛の依頼で出会った数少ない人々に、茶を教えてもらったこと。
 
 朝と夜とをやり過ごし、ただ生き続けるだけだった獣のような半生。
 たった、それだけ。


 生まれ故郷ティルキス
 
 とある地域には、古い時代に故郷を追われて放浪者として生きるようになった者も数多く。
 その中、放浪の旅路を終えて安住の地を見出した者達の村も幾つか存在した。
 アレンカは、その中のひとつ、
ティルキスと呼ばれる村に生を受けた。

 ストルミスカの名を継ぎながらも、それを隠して婚姻を結んだ父バルナバーシュと、
 ティルキス村長の娘ターニャのひとり娘であったアレンカ。
 その辺境の村で可愛がられて育った彼女は、無邪気で好奇心旺盛、悪戯好きな幼子だった。
 しかしある時、父がストルミスカの生まれであるという事が村の巫女と村長の知る所となる。

"ストルミスカの死の折に、その身に宿った魂達が行き場を失くしてその村を呪い滅ぼした"

 ――そんな逸話をかたく信じていた村長たちは、
 ストルミスカであるバルナバーシュと、その血を継いだアレンカを村から追放する。
 戸惑い止める事の出来なかった母を、泣いて求めてももうどうする事も出来ずに。
 アレンカの長い流浪の旅路が始まったのは、二つや三つの頃だった。

  ex.ティルキスの村
    放浪民族ムラック(Mrak-雲)が安住の地として築いた村。
    守護石ターコイズの加護のもと、慎ましい暮らしをしている。
    厳しい村長と、年老いた巫女とが村のまつりごとの決定権を担う。


 放浪の旅路
 
 母を恋しがって泣いたアレンカに、しかし父バルナバーシュは甘い言葉を掛ける事はなかった。
 父は寡黙な男だった。時折紡がれる言葉はひどく堅く、情の篭らない言葉。
 アレンカはいつしか、泣くのをやめた。縋る事も、笑う事も、怒る事もしなくなった。
 口数乏しく、ただ父に置き去りにされることのないように、足早に彼の後を追った。

 親子らしい会話も、愛情も掛けられる事は無かった。
 旅の中を生き抜く為の知識を教えられ、ただ従順にそれを飲み込んで。
 やがてふるさととは違う言葉――共通語を強いられるようになった時も、アレンカは拒絶しなかった。
 父に付いていく為には、彼の言うことには従わねばならぬのだと、幼いながらにそう感じて。
 彼女の堅い言葉遣いは、この時父から書物を用いて異国の言葉を学んだ故である。

 馴染みのない言葉は、それでも話せば思い出す事が出来た。
 文字を教えられても、使う事が無いから消えていった。
 何故父は、私にこんな事を教えるのだろう。
 不思議に思っても、アレンカはそれを口に出す事は無かった。

 父は無闇に武器を振るう人間では無かったが、それでも害為すものがあれば剣を抜いた。
 まるで俊敏な美しい獣を思わせる動きで、敵の懐にするりと忍び込む。
 ……そんな父が、獣と差し違えて命を落としたのは、アレンカが十になるやならずの頃だった。
 
 血生臭かった。
 父の顔に血の気は無く、低い声音を掠れさせて、それでも平静を装った声でアレンカを呼ぶ。

「おれは助からない、おれの傷を癒す術は此処には無い。お前は、独りで生きねばならない」

 そう告げられて、アレンカはただ不安げにじっとしていた。
 父に置いていかれる?

「……これを」

 差し出されたのは、大きな翠の石が揺れる耳飾りだった。
 幼い彼女の小さな顔には些か大きく感じられるそれを受け取って、不安げに見返すアレンカ。

 「……これが、お前を護る事になる。邪な者や、声から。片時も離すな。いつも、身に着けていろ」

 呆然とする彼女に、「付けろ」と促す父。
 言われるがままにした彼女の、左耳だけに揺れる大振りの石。生まれ故郷ティルキスの、守護石ターコイズ。
 父は頷くと、「行け」と。いつもと変わらぬ声音で。
 身を護る為にと、差し出された剣。父がいつも、振るっていた細身の片手剣。
 幼い娘には重すぎる、鞘に収まったままのそれを抱えたまま、アレンカは動けずにいた。
 此処を離れろと促す父。不意に落ちる陰。見上げた空、旋回する無数の鳥たち。
 竦む少女。父は目を伏せた。風が起きる。襲いかかる、ものたち。

 アレンカは逃げた。形見の剣を抱いて、ただひたすらに。
 無数の鳥影が群がる景色を、背の向こうに置き去りに。

 振り返る事も、戻る事も、恐ろしかった。
 彼女はそのまま、逃げるように走った。
 今まで自らを守ってくれていたものの全てを喪ったアレンカ。
 周りの全てが、恐ろしかった。怖かった。死にたくなかった。父と同じ目に、遭いたくなかった。
 それと同時に、父を見捨てて逃げた自分が恐ろしかった。

 父に教えられた言葉をはなして、教えられた通りに日々を過ごして、
 形見の剣を振るうようになりながらも。
 
 愛情を与えてくれなかった父。見捨てて逃げた自分。
 振り返ってしまっては、自分が崩れ去ってしまう気がして。
 彼女はいつしか、父の事を考える事を拒むようになっていった。

 それからの長い長い孤独の旅路。
 父を振り返らなかった少女は、それからも考える事をやめて。
 自分の力だけを頼りに、生き抜かねばならぬようになる。


 ひとり
 
 幼い頃より我武者羅に生き抜いてきた彼女は、一端の戦士に引けを取らない強さを身に付けていた。
 その武力を以て、旅人の助けとなる事もあった。
 敵に非ざるものに害為す理由は彼女に無く、何よりその対価として何かを得る事は、彼女にとっても有益な事であったから。
 それが物であれ、情報であれ。

 旅人の話に耳を傾けるのも嫌いでは無かった。
 殆どは相槌をうつばかりであったが、他人がそうして何かに興味を持って語る様は彼女にとっては好ましく。

 時には、優しくしてくれる者もあった。
 護衛の仕事に、感謝してくれる者もあった。
 数少ない装飾品や装備も、趣味となった茶も、そうした旅人が都合してくれたものだった。
 もう二度と会うことは無いにせよ、その繋がりが己を生かしているのだということを、理解はしていた。

 しかし、彼女は人里に住まう事は無かった。
 地方を旅する中、彼女自身が背負うストルミスカの宿命は彼女を『死神』と呼ばせしめた。

「知っているんだよ、ストルミスカの死神は忌まわしい怨霊たちを連れてやってくる」

 毒づく言葉、忌避のまなざし。

 私は何もしていない。
 そう思えど、彼女はただ口を閉ざして立ち去る他はなかった。
 私はストルミスカ。
 例え何も為してはいなくとも、この身は、ストルミスカとして生まれついたこの魂は、多くの魂を宿して継いできた。

 ――"アレンカ"。私。
 そんなものは、彼女にとってはなんの意味もなさぬものだった。
 全ては、ストルミスカの宿命の前に掻き消えるもの。
 私は、ストルミスカ。
 彼女をアレンカと呼ぶ存在も、久しく無く。



 たった独りかさねた流浪の旅路、
 『死神』と拒絶される由となるストルミスカの宿命。
 受け入れる他無かった。それは彼女にとって唯一の存在意義。

 ストルミスカの故郷を旅人に訊ねもした。
 手掛かりは得られなかった。
 父の遺した耳飾りを、かなぐり捨てようと思った事もあった。
 彼らの故郷は失われた。還れない。還すことも出来ない。そして自らも、還る場所はない。

 ストルミスカとは、一体何なのだろう。
 果たせない約束を抱いて、彼らをただ此処に縛り付ける。彼らの声は、聞こえない。彼らは何を、望むのだろう。
 ただ無為に、存在しているだけなのであれば。
 ……ストルミスカの宿命を。この身を最期に、終わらせるべきなのではないのか。

 漠然と抱く思い。
 それでも彼女は怖かった。
 生きていたいのか。死にたくないのか。
 何を望んでいるのか。何を望んでいないのか。

 …いつでも決まって、頭を振った。
 考える事を、してはならなかったから。
 思考はいつでも己を苛む。
 なればこそ。

 アレンカとしての私など存在しなければ良い。
 考えなければ、私はただ生きていられる。
 思い悩むことも無く、ただこうして。

 …生きているだけの存在で、あるならば。

  戯書の世界
 

 とある男からいまわの際に戯書を譲り受けたアレンカ。
 彼女はただ生きているだけの、そして、ストルミスカとして生きて死ぬ他無かった彼女の人生。
 固くむすばれた蕾のような彼女の心に水を注いだのは、
 戯書を開いた先の世界で出会った者達だった。

 いつか出会って過ぎ去っていった旅人達のように、
 その優しさは私の手からいつしか過ぎ去るもの。
 そう思っていた筈なのに、顔を合わせては他愛の無い話をする日々に、彼女の心は揺らぎ始めていた。 

 やさしい日々。
 愛情を傾けられること。
 ぎこちなくもそれに応えること。
 誰かを守り、守られること。
 ひとり傷付いても、すくい上げてくれる者があること。 
 優しく見守ってくれる者のあること。
 無邪気に寄せられる好意とぬくもり。
 きこえる歌。
 大地のぬくもりと、芽吹く生命。
 風をわたり晴れ空に歌う鳥や草花。
 そのすべてを穏やかに見守ることのいとおしさ。
 愛しい日々。
 いつか失う仮初の居場所。

 いつものように、考える事をやめてしまいたかった。
 目を閉じて、やわらかな風を感じて、いとおしい喧騒に耳を傾けて。
 ただそうしていたい。
 ああ、そのまま死んでしまえるなら、どんなに幸せだろう。

 けれど、そうして行き場をなくしたものが仲間たちを苛むなら。ああ。


 分かっていた。
 すべてを手放して、ひとり消えていく他、私にはない。
 優しい日々を手に入れる事は、私には叶わない。

「自分の生き方は、自分で決めれば良い」

 友人となった、獣人の言葉。
 諦めていたもの。ひとの傍に生きること。それを阻むもの、ストルミスカの宿命。
 …この宿命を、終わらせる事が出来るなら?


 決してひらくことの無かった固い蕾。
 咲く事を忘れたそれは、いつしかほころび始めていた。
 
 
 to be continued...?
 
 

  …色々
 行動力消費型ネットゲーム、タワムレガキ用に誕生したキャラクターです。
 PL自身がキャラクター性を掴みかねる前であるということ、
 他人との接触の中で変わる存在であればということで、
 彼女の元々の世界/未来というものの設定は、限りなく白紙です。

 最初に考えた、「戯書に来なかったら」という妄想ですと、
「人と接するようになり、己の宿命を疑問視しはじめる。
 宿命を終わらせる為に魂たちを弔おうとしたが、それを異教徒の手に委ねようとしてしまい
 その異教徒に故郷を奪われた魂たちが怨霊として姿を現し、
 アレンカはその怨霊を止めるべく異教徒の兵に殺されてしまう。
 しかし怨霊を止める事は叶わず、無数の怨霊たちはその異教徒の国を滅ぼし、アレンカ自身もそこに囚われる」
 …というものでした。

 彼女はその魔除けの耳飾りの効力で、魂達から自分の魂も精神も守られています。
 これは故郷ティルキスで父バルナバーシュが授けられた、巫女の祝福を受けたターコイズの効果でもありますが、
 その分だけ、魂達の声を聞く能力には疎くなっていました。

 他人と生きる事をしなかった為に、他者と意思を交わすことに思い当たらなかった彼女。
 魂達が望む事を知ろうとせず、また知る術もなかった彼女は、魂達がいちばん望まなかった形を与えてしまった…
 というのが、上記のストーリーの顛末でした。

 が、戯書での交流の中、彼女は他人と意思を交わすことを覚えました。
 様々なひとに出会いました。
 信ずる者、様々な立場、それゆえに与えられた苦難、その者をかたく縛るもの、それでも前に進もうと足掻く姿。
 声をきくこと。言葉を交わすこと。思うこと、望むこと、誰かと生きること。

 それらを知るようになった頃、友人にとある魔道具を贈られました。
 それは本来、オニビと意思を交わす為のものでした。
 しかし、霊魂の類と推測されるオニビと意思を交わすということは、そのまま霊魂と意思を交わすことが出来るということ。
 その道を示唆して貰った彼女は、次第に「魂たちの声と対話する事によって、弔いたい」と考えるようになります。

 戯書世界で「本を読む」という事に興味を持ち始めたアレンカは、文字を学び始めます。
 墓を持たない魂たちの声を刻むことで、墓の代わりに出来たなら。
 読む者が有る限り、文字はその記憶を世界に保ってくれます。
 そうして学んでいく中、とある陰なる存在と出会います。

 アレンカの望む道を聞き、真っ直ぐに話をしてくれたその影。
 その魂達を喰らってやろうか、と訊くその影に、喰うとどうなるのかとアレンカは訊ね返しました。
 「輪廻も先もない、ただの無になる」。返ってきた答えに、アレンカは首を振りました。
 ならば、おまえの手を借りることはすまいと。無ではない、その先を与えてやりたいと。「今は、まだ」とつけ加えて。
 どうしても手に負えなくなったら手を貸してくれと笑うアレンカに、影は言います。
 もう、言葉も通じねえそれならいっそ消してやる事もまたそいつの為かもしれねえと。
 壊れんじゃねえぞ、彼女を”アレンカ”たらしめる、彼女を大事に思う存在は、それだけで救われるだろう。
 だから、その時はと。許諾するように、上げる唸り声。

 様々なものに助けられて、彼女は其処にあります。
 魂達が素直に受けるにしろ、抗うにしろ、彼女に手を貸してくれるものたちを、彼女は得る事が出来ました。
 生きたいと思う理由も、未来も。

 戯書で与えて貰ったもの、考え、在り方、そのすべてが
 元々考えていたその未来とは違うものに導いてくれる事は間違いないでしょう。
 
 ここからの展開も色々考えてはありつつも、
 ソロールが恥ずかしかったり、人様の手を借りるのも申し訳ないし妄想しとこう…みたいなとこ、あります。
 
 妹のようにも娘のようにも思うルウちゃん(59)が、多分彼女と人とを繋いで、
 何かを愛で慈しむということを教えてくれたとわたしは思っていますし
 共に生きる事を望むようになったリコさん(179)が、彼女が自分の生き方を変える切っ掛けの言葉をくれたその方なのですが
 尊敬と信頼を寄せる中で徐々に変化していくものを考えると、なかなか感慨深い。

 多分それぞれの出会いがそれぞれ彼女に変化をもたらしていると思うのです…
 キャラクターを育ててくださってありがとうのきもち。

 文字を学ばせ始めたのには、PLの他の思惑があったりなかったりしますが
 それもまた機会あらば!

 ※他キャラクターさんの言動がちょみちょみ載ってますが
  問題ありましたら@0_0akiferまで…! 対応いたします!
 






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